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組踊上演300周年記念事業-特別企画-

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『発見された半世紀前の真境名由康フィルムの復元〜福地唯方コレクションの復活〜』真喜屋 力

今回の組踊にまつわるコラムは、映画製作会社「シネマ沖縄」が収集している8mmフィルム・アーカイブに寄せられた、古い組踊の記録映像についてです。映画監督の真喜屋力さんに寄稿いただきました。

 


「真境名由康『二童敵討』沖縄タイムスホール」1966 from 沖縄アーカイブ研究所 on Vimeo.
 

一本で3分20秒ほどの8ミリフィルムが収まった紙箱には、それぞれの内容が細かく書かれていた。「真境名由康 二童敵討 ’66年 沖縄タイムスホール」「金武良章氏『あまほへ』’66年 首里博物館ホール」などといった、組踊関係のタイトルに思わず息を飲んだのを覚えている。

なんとフィルムは全部で87本。そのうち組踊関係と思われるものは10本ほどだが、残りは「’69年 琉球フェスティバル」のような芸能公演。さらに「’72年 狩俣の葬礼」「’66年 伊計島 アジ神」など、地域の祭祀が収められていた。撮影したのは郷土史研究家で故人の福地唯方(ふくち・ただよし)氏。フィルムは遺族より那覇市歴史博物館に寄贈され、我々の元にやって来た。緻密な箱書きに、丁寧な仕事が見てとれる。

僕らはシネマ沖縄という県内の映画製作会社だが、ここ数年、市井の人々の記録した8ミリ映画の収集を続けている。多くは家族の記録映像だが、時としてこういう地道なフィールドワークの成果に出会うこともある。後世に伝えたいという撮影者の遺志を感じ、いつもよりテンションが上がってくる。

しかし、残念なことに、フィルムは全て激しく劣化していた。色落ちしたり、ゆがんだりすることはよくあるのだが、福地氏のフィルムは全て固着、つまりフィルム全体が貼り付き、固まっている状態だった。このままでは引っ張り出して写真に撮ることすらできない。専門の業者に問い合せたところ、観賞できるようにするのに一本あたり30万円ほどの経費がかかるだろうということだった。これはつまり、87本すべてをデジタル化すると2600万円ほどかかるということ。

とは言え、映像の少ない時代の貴重な記録。なんとかしたいと思い、資金造成の足がかりにすべく、業者の方にお願いして、「真境名由康 二童敵討 ’66年 沖縄タイムスホール」のフィルムの冒頭30秒ほどをデジタル化していただき、少しでも多くの人々に、この感動を伝えるべく、インターネットでも公開している。

フィルムをデジタル化する作業は、フィルムをバラしながら1コマずつ撮影していくという恐ろしく時間がかかる方法をとる。もちろん固まったフィルムをはがすのだから、ひび割れなど、画面の欠損は避けられないわけだが、真境名佳子、真境名由康という二人の名優の演技は、ひび割れの向こう側に見事に甦っていた。

この真境名由康『二童敵討』のフィルムを含む、すべてをデジタル化することは難しいと思われるが、リストを元に関係各所をあたることで資金造成を行い、少しでも多くのフィルムを甦らせることができるのではないかと、無謀な企みがふつふつと湧き上がっている。おそらく撮影をされた郷土史研究家の福地唯方氏も、自身のフィールドワークの成果を後世に役立てたいに違いないはずだ。とんでもないバトンを受け取ってしまったものである。こうなると後悔するより、ワクワクする衝動に身を任すしかない。物言わぬフィルムの復活に、多くの人々の協力を仰ぎながら歩を進めたいと思う。


真喜屋力(まきや つとむ)
沖縄県生まれ。沖縄在住。映画『パイナップルツアーズ』(’92)監督後、東京のミニシアターで勤務。2004年に『アークエとガッチンポー』(TX)の監督。その後、沖縄に戻り桜坂劇場勤務。2011年5月よりフリー。
2012年、RBC『ゾンビのカジマヤー』を公開。あわせて個人プロジェクトとして「映画のアナロブ盤」を勝手に推進中。

 


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