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組踊上演300周年記念事業-特別企画-

Interview|未来への継承者たち Vol.3「新垣俊道」

1719年に組踊が上演されてから300年、多くの先人たちによって組踊が今日まで伝え続けられてきました。
「インタビュー|未来への継承者たち」は、次の100年をつなぐ役割を担う中堅・若手実演家たちにスポットをあて、シリーズで組踊の魅力やこれからの組踊について語っていただきます。

第3回は、組踊の地謡を務める沖縄伝統組踊「子の会」新垣俊道前会長にお話しを伺いました。

(インタビュー:真栄里泰球)

多くの仲間と志を共有して舞台を務めている新垣俊道さん。撮影:大城洋平


Q国立劇場おきなわの組踊研修修了生でつくる「子の会」は鑑賞教室に積極的ですね。

新垣 「組踊」というからか踊りのイメージが強いみたいです。県外で「踊りはないんですか」と言われることもあります。沖縄県民への浸透もまだまだですが、「300年」ということで、テレビなどでも露出が多くなってきました。離島を含む沖縄県内各地だけでなく、全国を巡回公演していて、出演者の確保にちょっと苦労するほどです。古典組踊の「二童敵討」や「執心鐘入」を演じることが多いです。組踊の言葉がわからなくなっているので、第一部での解説やダイジェスト版に力を入れています。「眠ってしまうかと思ったけれど、面白かった」という反応があると手応えを感じます。若い人が出ると、子どもたちの見る目が変わってきます。子の会の中でも20代の若いメンバーがやると親しみがあるようです。でも若いだけでは締まりがないので、芯をとれる方を入れたりと工夫しています。伊平屋島での公演を見た子が組踊300年のキャッチコピーを考えたと聞いてうれしいです。離島での公演は助成が必要なので県の予算が途切れないようにと願います。

Qご自身は芸能になじみのある家庭でしたね。

新垣 父親が三線を弾いていました。父の勧めで南風原高校の郷土文化コースに入りました。でも、組踊はあまり知りませんでした。高校時代に「若松会」のことを新聞で知りました。学校の芸術鑑賞会で「花売の縁」の猿引きの役や「執心鐘入」の若松役などを、人がいないからとさせられました。踊りをやっていないので難しかったですね。そのときに沖縄県立芸術大学の先輩方とつながりができて、学内演奏会や男性有志公演などを見に行きました。

Q組踊を始めたのは大学からになりますか。魅力はどこにありますか。

新垣 芸大の学内演奏会が初めてだと思います。組踊は三線の最終的な目標です。基本的な古典音楽ができないといけないし、舞踊の地謡も経験してはじめて組踊ができる。要素が凝縮されていますよね。「歌って楽しい『手水の縁』」、「弾いて楽しい『花売の縁』」だと思います。「手水の縁」(伝・平敷屋朝敏作)は、二揚五節と二揚の東江節が入って、歌いがいがあります。組踊の創始者・玉城朝薫の音楽の使い方を踏まえて、さらに発展させています。「花売の縁」は軽快な曲や独唱曲などいろいろな曲があります。調弦は大変ですが。朝薫の五番はもちろん基本です。

2016年の初独演会での組踊「執心鐘入」。「組踊には歌三線の要素が凝縮されています」と語る。撮影:大城洋平


Q芸大と研修の両方を経験しました。

新垣 大学院を卒業した年に国立劇場おきなわができ、翌年から研修が始まりました。研修は半年で一演目を上演できるまでに仕上げるので、みっちり集中して稽古します。6時半に始まる研修を終えてから職場に戻って仕事の残りをしたりもしました。一流の先生方が講師なので、勉強になり、引き出しが増えました。芸大は幅広く学べるので対応力がつきます。芸大を終えて研修に入れたのはとてもよかったです。

Q今後の抱負は

新垣 仲間と「歌鎖」という公演を続けて、今年で5年になります。古典音楽・歌三線だけでどれだけ聞かせることができるか。地味といえば地味ですが、音楽を深めるきっかけになり、達成感もあります。組踊を始めほかの舞台にもいい影響があると思います。組踊350年の時に僕は生きていれば、やっていると思いますが、その時の環境はどうなっているのかでしょうか。観客も演じる側も世代をつなげることを考えないと、と思います。一線の先生方の演奏を聞いていると、人生が音楽になり、音楽を通して人生が現れている。そこを目指したい。自分も30代から40代になって変わってほしい。そのままでは停滞してしまうので。

理想の音を求めて精進を続けている新垣俊道さん。撮影:大城洋平

 


新垣俊道(あらかき・としみち)
1979年、南城市生まれ。琉球古典音楽野村流保存会師範、琉球古典音楽湛水流保存会教師。野村流を新垣一雄、湛水流を宮里秀明に師事。県立芸術大学・同大学院修了。
在学中から現在まで比嘉康春に実践的な技芸を学ぶ。国立劇場おきなわ第一期組踊研修修了。


インタビュー:真栄里泰球(まえざと・たいきゅう)
 2001年沖縄タイムス入社。組踊や琉球舞踊など琉球芸能を長く取材。
新聞のほか国立劇場おきなわステージガイド「華風」、各種雑誌などにも寄稿している。

 


 

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