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組踊上演300周年記念事業-特別企画-

Interview|未来への継承者たち Vol.11「入嵩西 諭」

1719年に組踊が上演されてから300年、多くの先人たちによって組踊が今日まで伝え続けられてきました。
「インタビュー|未来への継承者たち」は、次の100年をつなぐ役割を担う中堅・若手実演家たちにスポットをあて、シリーズで組踊の魅力やこれからの組踊について語っていただきます。
故郷の八重山芸能に親しんできた入嵩西諭さん。沖縄国際大学から沖縄県立芸術大学大学院に進学しました。そこで琉球古典音楽に触れ、笛の魅力に気づきました。日本の芸能全てを吸収したいと、その活動の幅を着実に広げています。

(インタビュー:真栄里 泰球)

Q|幼い頃から八重山芸能に触れ、八重山高校郷土芸能部だった2002年に全国高等学校総合文化祭の郷土芸能部門で最優秀賞となりました。沖縄国際大学に進学し、大湾清之師匠に出会ったことで本格的に古典音楽の笛の道に入ったそうですね。

琉球古典音楽の笛の可能性を追求する入嵩西諭 撮影:大城洋平

入嵩西 諭(以下、入嵩西)|
2003年に沖縄(編集注:沖縄本島)に来たのですが、卒業したら石垣に帰って仕事をしようと思っていました。三線や笛は好きでしたが、八重山芸能がメインで、古典は一生懸命ではなかったです。
郷土芸能部でも一緒だった横目大哉さん(琉球古典音楽安冨祖流絃聲会師範)が沖縄県立芸術大学に行っていて、「笛のすごい先生がいるよ、笛買ってみる?」と言うので軽いノリで連絡したら「今日、おいで」と呼ばれました。飲みに連れていってもらって、色々話をしてもらいました。先生の演奏も聴いて「すごいな、もっと学びたい」と思いました。

 

Q|いい笛、いい演奏家とは。

入嵩西|いい笛は吹いてすぐ音が出るし、吹いていても気持ちが違います。
先生の作る笛はピッチが整っているので、三線にも合わせられるし、独奏もできるし、洋楽ともできる。今は40本くらい持っていて、曲や歌三線が男性か女性かなどで使い分けていますが、「レギュラー」はだいたい決まってきますね。
いい人がいい笛を吹くといい音楽になるんですよ。古典音楽で言えば、大湾先生は「歌を包み込むように」と仰います。自分は「歌に寄り添うように」と感じますが、やっていることは同じだと思います。伴奏は主張しない。三線や歌が生きるようにと心がけます。そして、箏、胡弓、太鼓とのバランスを取ることができて、独奏になれば歌うように吹ける。まあ、理想はうちの先生のような人ですね。最近、思ったのは、歌うのと吹くのは似ていて、歌がうまい人は、笛がうまくて、その逆も言えるかなと。
先生は舞台稽古などではアドバイスをしてくれますが、普段はあまり笛の稽古はしてくれないです。三線の稽古はします。「歌心が分かれば、笛心は分かる」ということでしょうか。三線の稽古の中で笛の話をするので、そこからどれだけヒントを受け取れるかじゃないでしょうか。

三線音楽公演 古典音楽の美で(2019年5月25日) 大湾清之先生(重要無形文化財「組踊」、「琉球舞踊」保持者)と共演@(公財)国立劇場おきなわ運営財団

 

Q |組踊の中でも笛は重要な役割を担っています。

入嵩西|「銘苅子」、「手水の縁」、「執心鐘入」などですね。「銘苅子」は出羽(登場のシーン)なのでシンプルに吹きます。「手水の縁」は山戸が恋人に忍んで会いに来た場面なので、恋している男の艶を出せるようにと。
「執心鐘入」は宿の女が鬼女になった悲しみだけでなく、鬼女になるほどの強い気持ちを意識しています。

組踊「執心鐘入」の大詰めは笛の聞かせどころ(右から二人目)。 撮影:大城洋平

 

Q|「執心鐘入」では鬼女が調伏される大詰めで、「干瀬節」を吹く大湾先生の工夫が有名です。

入嵩西|「執心鐘入」では「干瀬節」が3回歌われます。うきうきした気持ちに応えてもらえなくて、最期には一緒に死ぬしかないと思い詰める、宿の女の心情の変化が歌われています。
そういった果てに鬼女になり、座主に思いをぶつける場面では、これまでの「フーヒー」という演奏では表現できないのではないかと。初めてやったのは県外の公演らしいのですが、そのときに宮城能鳳先生(組踊立方人間国宝)などから「いいね」と評価があったそうです。先生も今なお模索されていますが、今のベストは「干瀬節」だろうと。自分も納得しています。太鼓が激しく、笛が悲しく、違う次元で表現しているのがいいです。

 

様々な楽器とのコラボレーションにも積極的だ。三線・仲村逸夫、パーカション・屋比久理夏 撮影:大城洋平

 

Q|多くの公演から声が掛かり、活躍が続きますが、今後の展望は。

入嵩西|有難くも多くの公演に呼んで頂いています。自分の売りは、伴奏に徹するのと、きれいな音、心地よい音楽を目指しているところでしょうか。笛には肺活量はあまりいらないです。どれだけ一定の演奏を維持できるかが大事ですね。息のボリューム感などが、1曲目と10曲目が違ったら困るので。箏・三絃・二十五絃箏演奏家の中井智弥さんと演奏する機会ができて、箏と二人の時は、三線の伴奏の時とはちがって、引いたらだめなので、自分を出すようにしています。中井さんから「尺八はこうしているよ」などアドバイスももらいます。沖縄の笛と篠笛は構造が似ているし、尺八とも通じるところがあります。日本の芸能の全体を見て、吸収したいタイプで、それが最後は組踊につながるといいと思います。
あと数年くらいしたら、着実にうまくなりたいですね。もっともっと研ぎ澄まして、よりいい演奏ができていたら。大湾先生により近づきたいです。目指せる方に出会えたのは幸せですね。追いつかないですけど。

中井智弥の二十五絃箏、池間北斗の琉球箏との共演 撮影:真栄里泰球

 


入嵩西諭 (いりたけにし・さとし)
1985年石垣市生まれ。琉球古典音楽安冨祖流絃聲会師範。大湾清之に師事。沖縄県立芸術大学大学院修了。国立劇場おきなわ組踊研修修了。

 

 



インタビュー:真栄里泰球(まえざと・たいきゅう)
2001年沖縄タイムス社入社。組踊や琉球舞踊など琉球芸能を長く取材。
新聞のほか国立劇場おきなわステージガイド「華風」、各種雑誌などにも寄稿している。

 


 

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