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特集

組踊上演300周年記念事業-特別企画-

Interview|未来への継承者たち
Vol.1 「嘉数道彦」


1719年に組踊が上演されてから300年、多くの先人たちによって組踊が今日まで伝え続けられてきました。
「インタビュー|未来への継承者たち」は、次の100年をつなぐ役割を担う中堅・若手実演家たちにスポットをあて、シリーズで組踊の魅力やこれからの組踊について語っていただきます。

初回は、組踊の立方で、脚本・演出も手がけるほか、国立劇場おきなわの若き芸術監督として活躍する嘉数道彦さんにお話を伺いました。

(インタビュー:真栄里泰球)


Q|組踊初演300周年と国立劇場おきなわ開場15周年が重なります。

嘉数道彦
(以下、嘉数)|偶然ですが、節目のお祝いなので、まずは喜べたらと。大きな節目あたり、実演家のみなさんはそれぞれの立場で感慨深いものがあると思います。僕は大学までは自分が組踊をやるとは思ってもいませんでしたが、今では立ち会うことができてうれしく思いますし、責任の大きさも感じます。

Q|組踊を始めたのは、沖縄県立芸術大学からなんですね。

嘉数
|必修の授業だったんです。選択ならとらなかったかもしれないですね。小さいころに「銘苅子」の子役の「うみない」をやったことはあるのですが、眠たくなるゆったりしたものというイメージしかなく、それ一度きりで、またやりたいとは思いませんでした。大学に入って最初の夏休みに、学生による「執心鐘入」に出演する機会がありました。小僧2の役でしたが、そのときに、目覚めるというと言い過ぎかもしれないですが、面白いものなんだと思いました。様式の中で演技すること、音楽で盛り上げていくところなど、稽古や本番を通して「こんなにすごいものだったのか」と感じました。それからは楽しくなって。学生時代は、舞台に立つだけで嬉しい時期でした。

©️(公財)国立劇場おきなわ運営財団

Q|今はどんなところがいいなと思いますか

嘉数|組踊の生まれた背景を考えると、御冠船時代の大変さを感じ、違った見方もするようになりました。国家を安泰にするための芸能で、中国への気遣いもあったのかな、などです。沖縄の芸能だけれども、沖縄の人のために作り出されたものではないところが、組踊の特徴であり、悲しさというか、定めでもあります。そういう時代の流れの中で、今の沖縄があることを忘れてはいけないし、先人の工夫や苦労が詰まった作品を重んじながら、今にどう伝えていくのかという可能性のある芸能だと思います。

Q|現代の観客はどう受け止めていますか

嘉数
|「組踊は聞くもの」とか「想像力を使って見る」などの言葉が浸透して、役者や演奏家それぞれの魅力を楽しんでいただけるようになったのではないでしょうか。(国立劇場おきなわのアンケートなどで)30代、40代の実演家の人気がありますが、先生方の育成の成果がではじめて来た成果ではないでしょうか。沖縄県立芸術大学や国立劇場おきなわができ、人間国宝の誕生や、ユネスコの世界無形文化遺産への登録など、うれしいニュースがあり、組踊の認知度が上がってきました。

嘉数道彦さんが脚本・演出を手がけた「組踊版さるかに合戦」の稽古風景

Q|国立劇場おきなわは鑑賞教室にも力を入れていますね

嘉数|あらすじ紹介のような解説はこれまでもありましたが、実際に(ポーズを示して)様式のありかたを説明する普及公演のスタートは画期的だったと思います。(元劇場職員の)池宮一さんが考えたものが元になっています。「想像力」という言葉をこの時に聞き、「あはー、なるほど」と思いました。初めての方にはそういう入り口が必要です。鑑賞教室のスタートから10年ほどたつので、次の段階も考えたいと思っています。
県外でのワークショップもありますけれど、それを受けて見に来る方も結構いるんですよ。のめり込むと、うちなーんちゅより熱心ですごいです。

Q|ご自身が面白いと思う組踊の作品はどんなものですか

嘉数|主役だけでなく、脇の強さといいますか、見せ場に興味があります。例えば「二童敵討」の供とか「執心鐘入」の小僧など、存在感を示すところは示し、主役も引き立てる。組踊はそういうところが総合的にうまく作られている。音楽もそうです。適材適所でいい舞台を届けたいです。新作でも演じる人が力を発揮できる作品、舞台作りを考えています。現代のお客様に見ていただいて、心を打つものをという考えもありますし、組踊の世界観を大切にしたいということもあります。

Q|尊敬する方はいますか。

嘉数|どなたと決めるのは難しいですが、先輩方の芸やお人柄、歩んできた道を見ると、皆さん素晴らしいと思う。以前はスポットライトを浴びる機会もすくない中で、着実に組踊をつないでこられたことに頭が下がりますし、私たちの世代はしっかりやらないといけないと思います。

Q|組踊の今後は

嘉数|長い将来を見つめて着実に歩みたい。誇らしく演じる役者や地謡がいて、お客様が笑顔で会場を出るというのは一つの理想です。加えれば、それで生計が立てられるようにということもあります。350年、400年のときには、そうなっているように、みなさんと手を取って頑張りたいです。

 


【組踊上演300周年事業|関連情報】
共催事業|平成30年度那覇市文化芸術ふれあい事業 沖縄伝統芸能公演(組踊)|組踊版スイミー(監修:嘉数道彦)、組踊版さるかに合戦(脚本・演出:嘉数道彦)|2019年1月19日(土)・20日(日)|於:パレット市民劇場

 



嘉数道彦 (かかず・みちひこ)
宮城流能里乃会師範。初代宮城能造、宮城能里に師事。沖縄県立芸術大学大学院修士課程修了。
組踊「十六夜朝顔」「初桜」など作品多数。2013年から国立劇場おきなわ芸術監督。

 



インタビュー:真栄里泰球(まえざと・たいきゅう)
2001年沖縄タイムス社入社。組踊や琉球舞踊など琉球芸能を長く取材。
新聞のほか国立劇場おきなわステージガイド「華風」、各種雑誌などにも寄稿している。

 


 

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