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組踊上演300周年記念事業-特別企画-

Interview|未来への継承者たち Vol.10「藏當慎也」

1999年に勝連町(現うるま市)で誕生した現代版組踊「肝高の阿麻和利」は2020年3月に20周年を迎えます。その活動は総務省「地域づくり総務大臣賞」受賞(2007年)、日本ユネスコ協会連盟「第1回プロジェクト未来遺産」登録(2010年)などの外部からも高い評価を受けています。
上演される地域の歴史や言い伝えを物語化し、地域芸能を織り込みながら、地域に住む若者たち(おもに中高生)によって演じられるその手法は「現代版組踊」という新たなジャンルとして確立され、沖縄県内外に広がっています。今回は、現代版組踊推進協議会の副会長でもあり、現代版組踊の舞台制作を手掛ける(一社)TAOFactoryの代表理事・藏當慎也(くらとう・しんや)さんに、現代版組踊について伺いました。

(インタビュー:島袋 景子)

Q|現代版組踊について教えてください

藏當慎也(以下、藏當)|現代版組踊は、20年前に勝連町(現うるま市)ではじまった取り組みです。当時、勝連町では不登校や、子どもの無気力などが問題になっていました。教育長だった故上江洲安吉先生が「子ども達をなんとかしなければ」という想いで立ち上がり、勝連町の中高生が自分の住む地域の歴史を学び、演じる機会として「肝高の阿麻和利(きむたかのあまわり)」をつくったのが始まりです。その後、上演を重ね、総公演回数は325回、総入場者数は186,153人(2019年9月現在)になりました。

同じような取り組みを「自分の地域でもしたい」という地域が徐々に増え、今では、現代版組踊推進協議会には13地域16団体が加盟しています。沖縄県内だけではなく、北海道や福島県、鹿児島県などを拠点に活動している団体もあります。

舞台の内容や運営方法は地域によって異なりますが、「子ども達が主役であること」「地域や文化芸能への興味の入口となり、子ども達の感性や可能性を伸ばす場所」であるという原点を大切にし、それぞれが活動を行っています。

1999年にスタートした現代版組踊「肝髙の阿麻和利」うるま市の中高生により演じられている。 提供:藏當慎也

 

Q|藏當さんと現代版組踊との関わりを教えてください

藏當|中学1年生の時に、初めて「肝高の阿麻和利」に参加しました。最初は地域芸能の枠に出演したので、地域の芸能祭に出ている感覚でした。練習中に遊んで怒られたりしていました。でも、本番の日に「何か違うぞ」と感じて。そして、フィナーレで出演者全員とステージに立った時、まわりの同年代の人たちが一生懸命にやっている姿をみて、とてもびっくりしたんです。そして、2回、3回と参加していくうちに、のめり込んでいました。高校卒業後は運営側にまわり、気が付けば17年が経ちました。今は演出、脚本、指導などの立場で舞台づくりに関わっています。

中学1年生で参加し、現在は演出として後進の育成に取り組んでいる藏當慎也さん。提供:藏當慎也

 

Q|藏當さんのように卒業後も関わり続ける卒業生は多いのですか

藏當|そうですね。指導者として関わってくれる場合もありますし、公演の時の運営スタッフとして関わり続けてくれることも多いです。一度、進学などで県外に出ても、いろんな知識や技術を持ち帰り、運営に参加してくれることも増えてきています。

Q|8月の関東公演は大成功だったようですね

藏當|8月10日に茨城公演、12日に東京の国立劇場大劇場で公演をしてきました。国立劇場での公演は、上江洲先生の夢の一つでもありました。公演が決まったことを関係者が報告した際には、「長生きしないとなぁ」とおっしゃってくださっていたのですが、公演を待つことなく6月に先生はご逝去されました。先生に公演を観てもらえなかったのは残念ですが、各公演、満席のお客さんに迎えられ、国立劇場の最終公演ではスタンディングオベーションもいただきました。

10年ぶりの東京公演でしたが、東京の支援組織である「東京レキオス会」や「あまわり浪漫の会東京支部」、関東に住んでいる卒業生たちの応援に支えられました。また、茨城公演は8年前からお声かけしていただいていたのですが、今回、実行委員会の皆さんが60名ほど動いてくださり、クラウドファンディングで資金を集めてくれました。茨城では、子ども達を招待する招待公演も行い、地元の子ども達と交流することもできました。

2019年8月には東京の国立劇場大劇場で公演を行った。提供:藏當慎也

 

現代版組踊の公演会場の運営や受付などはOB・OGや地域の支援者によって支えられている。提供:藏當慎也

 

Q|国立劇場の公演では組踊実演家の神谷武史(かみや・たけふみ)さんも出演されたそうですね

藏當|今回、国立劇場でやらせていただけるということと、組踊上演300周年ということもあり、上演前に組踊についての解説を入れました。そこで、神谷武史さんには「二童敵討」のシーンを演じていただきました。神谷さんには事前に、出演する子ども達に、舞台に立つ際の心構えやあまおえ役をどういう気持ちで演じているかなどのお話もしてもらいました。

子ども達からは、「きめられた様式、所作のなかでもきちんと役に対する考えをもって役作りをしていることに感銘を受けた」などの感想もあがりました。私自身も今回、改めて伝統芸能の方と一緒に作品づくりをすることで学ぶことは多かったです。300年の歴史の中にヒントや学びは多くあるのだなと改めて感じました。

また、現代版組踊をきっかけに、初めて伝統組踊に触れたお客さんにもとても喜んでいただけました。8月の公演をきっかけに、伝統組踊の舞台に足を運んでくれたお客さんもいるそうです。現代版組踊は観たことあるけど、組踊を観たことがないというお客さんも多いので、これからもこういった機会をつくっていければと思っています。

2019年8月の国立劇場大劇場の公演では神谷武史さんによる「二童敵討」のワンシーンが上演された。提供:藏當慎也

 

Q|活動は県外にまで広がっているとのことですが、その理由はなんだと思いますか

藏當|こちらから営業をかけたり、売り込んだりしたことはありません。現在活動をしている地域の公演などを観た人が自分の地域でもやりたいと、相談にきてくれます。参加してくれている子どもや大人、それぞれが発信源になってくれていることが大きいと思います。

子ども達も、最初は「演技がしたい」「ダンスがしたい」などバラバラの動機で入ってきます。その想いを活かしながらも、この活動の本来の目的である「地域や文化にどう興味を持ってもらうか」ということは気をつけています。自己表現にプラスアルファの意義付けを大人が行うことで、子ども達の視野を広げ、モチベーションを高め、よいチーム作りにもつながっていくと考えています。

現代版組踊推進協議会には13地域16団体が加盟し、各地の歴史を地域の若者たちが演じている。提供:藏當慎也

 

Q|今後の目標などあれば教えてください

藏當|先日、「肝髙の阿麻和利」を、きむたかホール(うるま市勝連)で観てくれた県外からのお客さんに「帰りのタクシーで運転手さんに感動を伝えて盛り上がりたかったのに、観たことない。って言われてしまい、とても残念だった」と言われました。

おかげさまで県外からのお客さんは増えていて、「肝髙の阿麻和利」では約2~3割は県外のお客さんです。公演にあわせて何度も沖縄に来てくれるリピーターの方も増えています。その一方、沖縄県内の人にまだまだ観てもらえていないと感じています。私たちの活動を理解してもらうための発信、コミュニケーションもしていきたいと思っています。

また、地域や参加者が増えていくなか、指導者や裏方も足りなくなっています。今までのように地域の皆さんにサポートしてもらいながらも、実演家の皆さんや外部の専門家の方々の力も借りながら、舞台としての質も高めていきたいと思っています。卒業生たちの活躍の場が広がるような取り組みもしていきたいと思っています。

「百十~MOMOTO~」では、OB・OGと現役生の共演・交流が行われている。提供:藏當慎也

 

【イベント情報】

「肝髙の阿麻和利」卒業公演2020年2月22日(土)~24日(月・祝)きむたかホール
「百十~MOMOTO」2020年3月14日(土)~15日(日)きむたかホール


藏當慎也(くらとう しんや)
1988年うるま市生まれ/(一社)TAO Factory代表理事/現代版組踊推進協議会副会長


島袋景子(しまぶくろ けいこ)
東京出身、15年前に沖縄に移住。舞台制作者/那覇市銘苅にある劇場スぺ―ス「アトリエ銘苅ベース」の運営スタッフ


 

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