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特集

組踊上演300周年記念事業-特別企画-

Interview|未来への継承者たち Vol.4「佐辺良和」

1719年に組踊が上演されてから300年、多くの先人たちによって組踊が今日まで伝え続けられてきました。
「インタビュー|未来への継承者たち」は、次の100年をつなぐ役割を担う中堅・若手実演家たちにスポットをあて、シリーズで組踊の魅力やこれからの組踊について語っていただきます。

第4回は、組踊の立方であり、舞踊家としてその舞の美しさにも定評のある佐辺良和さんにお話しを伺いました。

(インタビュー:真栄里泰球)

Q|組踊の主要な役を担ったり、全国的な賞を受賞するなど評価が高まっています。

佐辺良和(以下、佐辺)|励みにはなりますが、そこに乗らないように、有頂天にならないようにと、まだまだできていませんので。以前は指摘されたところを必死で直して舞台に立つので精一杯でした。実は30歳になってすぐの頃から舞台が怖くなったんです。せりふは合っているけれど、合っているのかなと不安になって、震えが止まらなくなりました。小道具を持つ手の震えがやまなかったり、女立ちという基本的な姿勢ができなくなったりもしました。今はあまり考えすぎないように、気持ちを無にして、と心がけたりします。正直楽しいということはないですが、役を深める面白さは感じます。

Q|組踊「執心鐘入」の「宿の女」はよく演じています。

佐辺|これこそ怖くなります。何回もやっているのに、本番になったら不安なんです。せりふもですが、感情が乗りすぎると姿勢が崩れたりするので。2月に横浜能楽堂で「執心鐘入」があったのですが、能舞台では勝手が違いました。幕内へ走り込む時の橋懸の長さとか、観客の視線の方向など舞台に立たないとわからないことがあるので。執心の鐘を能「道成寺」の作り物の鐘にならって縫ったりもしました。その鐘を人力で操作するのも興味深かったです。沖縄では狂言の茂山千五郎家と共演したのですが、基本的な技量-声量や体の使い方がしっかりしているから、アドリブがきいてくるのだと感じました。組踊にすぐにフィードバックということではないですが、これから先、何か違う舞台でいかされていくかな。

組踊「執心鐘入」宿の女役:©️(公財)国立劇場おきなわ運営財団

 

Q|組踊との出会いは。

佐辺|小学校4年で「執心鐘入」を初めて見て、「いつかやってみたい」と思いました。沖縄県立芸術大学に向けて島袋光尋先生に手ほどきをしてもらい、大学では宮城能鳳先生に教えていただきました。大学のときは厳しかったです。能鳳先生は発音や発声に細かく、もう一回、もう一回と教えてくださいました。大学院までは女形をやったことは、ほぼないです。先輩の嘉数道彦さんにあこがれて、「万歳敵討」の高平良御鎖(たかでーらうざし)とか「花売の縁」の薪取(たちじとぅい)など道彦さんがやった役をやりたいと。今は当たらない役なので、学生の時にできてよかったと思います。やるのとやらないのでは、見える景色が違ってくるので。

組踊「孝行の巻」うみない役:©️(公財)国立劇場おきなわ運営財団

 

Q|国立劇場おきなわの研修にも進みました。

佐辺|やる気のあるメンバーがそろっていて、とても濃密でした。宮城能鳳先生には引き続き教えていただきました。研修は先輩が助演者で入るし、器楽の先生方もいるので、学校とは違う緊張感がありました。研修を終えてからは、眞境名正憲先生や親泊興照先生などにも公演のたびに指導していただいています。自分の引き出しが多くなりますし、受け継ぐ責任を感じるようになりました。

Q|芸大で指導もしていますね。

佐辺|准教授の阿嘉修先生がメインで教えています。組踊専攻の学生の熱量は僕らのころと変わらない。吸収力もすごいです。教えることで、自分が分かっていないところが分かります。どう教えたら伝わるかな、こういう言い方が伝わるかなと考えます。

Q|組踊が300年を迎えました。

佐辺|ワークショップで組踊の歴史を説明すると「ああ、300年なんだ」と思います。つくられた時代を想像しますよね。当時はどうだったのか見てみたいです。芸大生時代にふと、300年のときは何をしているのかと考えたことがあります。今、その年にいい役を当てていただけるのは、ほんとうにありがたいです。一生懸命勉強して次につなげていきたいです。


佐辺良和(さなべ・よしかず) 那覇市生まれ。又吉世子に師事。琉球舞踊世舞流良和の会会主。沖縄県立芸術大学大学院、国立劇場おきなわ組踊研修修了。沖縄タイムス芸術選賞琉球古典舞踊部門大賞。同演劇部門奨励賞。日本伝統文化振興財団賞。


 インタビュー:真栄里泰球(まえざと・たいきゅう)
2001年沖縄タイムス社入社。組踊や琉球舞踊など琉球芸能を長く取材。
新聞のほか国立劇場おきなわステージガイド「華風」、各種雑誌などにも寄稿している。

 


 

 

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